藻岩山 | もいわやま | 531m | 登り: | 1時間00分 | 下り: | 50分 |
札幌市南区にある三等三角点の山。山名はアイヌ名のモ・イワ(小さい山)による。 藻岩山はインカルシュペ(展望台)と呼ばれていて、隣の円山がモ・イワと呼ばれていた.、モ・イワは麓の円山村の名称がいつしか山名となり、インカルシュッペ「展望台」がモイワと呼ばれるようになった。札幌市民にとって藻岩山・円山は生活に密着していて、藻岩は、「三十三ヶ所」・円山は「八十八ヶ所」と呼んだ時代もあった。明治18年(1886年)に浄土宗新善寺の信徒により三十三観音安置のために登山路が開かれ、2年後の明治20年には
「北海道新四国三十三番観音」の像が設置され、頂上には「奥の院」も建設された。インカルシュッペ(展望台)であったからには、それ以前にも路はあったであろう。
頂上まで観光道路やロープウエーで簡単に行くことができ、函館山、小樽天狗山と並ぶ「北海道の三大夜景」のスポットでもある。頂上にはレストランもあり、頂上で夜景を見ながらフレンチ料理を楽しむこともできる。スキー場もあり市民に親しまれている山である。 北東斜面一帯はシナノキ、ミズナラ、シラカバなど60種の広葉樹が密生する森林美観が認められ大正10年、国の天然記念物に指定された。 クマゲラ (天然記念物)、オオムラサキ(日本の国蝶)も見られ、この山で発見され「モイワ」の名を冠する植物や昆虫もある。【植物:モイワナズナ・モイワシャジン・モイワラン】【昆虫:モイワウスバカゲロウ・モイワハバチ】 等。 北東斜面一帯の天然記念物に指定された森の中に戦後、進駐軍に依ってスキー場が開発され、コース跡は暫く市街地から見えていたが、現在では緑に覆われ判別できなくなっている。 この施設の建設にあたって設計・監督を務めたのは、後の堂垣内北海道知事であった。 市内からは北側の山麓に白いパゴダ(通称:平和の塔、正式名称:札幌平和塔)が見えている。これは太平洋戦争の犠牲者の冥福と世界平和を祈る目的で、1961年(昭和36年)にインドのネール首相から贈られた仏舎利を安置して建立された。 また、藻岩山で意外なのは、南麓に発電所があるということである。札幌市南区白川にある藻岩ダムで豊平川から取水された水は導管を通ってこの発電所に送られ、発電を終えた水は発電所の隣にある施設、藻岩浄水場に送られ、水道水となっている。 また、市電車庫の藻岩山山麓には歴史のある湧水があり、多くの市民がミネラル水として利用している。 札幌市民に親しまれている藻岩山だけに各方向から登ることができ、5つの登山口がある。 @ 北の沢登山口: 片道総歩行距離:2.4kmの最短コース。西野真駒内清田線から途中で左折し藻岩山観光道路方向へ向かう。途中、三十三観音寺を左折した道路の終点が登山口。 登山口は標高:250mで馬の背(標高約350m)まで約100mを1.3kmの距離で緩やかに登る。馬の背より山頂までは約1.1km。 A 小林峠登山口: 片道総歩行距離:4.5kmの最長コースで利用者も少ない。西野真駒内清田線の小林峠に登山口がある。 小林峠コースと旭山公園コースの合流点「T6分岐点」まで2.9kmで、そこから約0.5kmで馬の背。馬の背より山頂までは約1.1km。 B 旭山記念公園登山口: 片道総歩行距離:4km、旭山記念公園の左側に登山口があり、標高約130mから2.4kmで「T6分岐点」、そこから0.5kmで馬の背、馬の背より山頂までは約1.1km。 C 慈啓会病院前コース: 片道総歩行距離:2.9km、慈啓会病院脇に登山口があり、標高約60mから1.3kmで「T6分岐点」、 そこから0.5kmで馬の背、馬の背より山頂までは約1.1km。 D スキー場コース: 片道総歩行距離:3.35km、市民スキー場の「雪友荘」脇に登山口がある。 |
登山口 | 駐車場 |
登山口にある山頂まで2.9kmの表示 | 広く歩きやすい登山道 |
ここでは一番ポピュラーな登山口慈啓会病院前からスタートする。 ここにある慈啓会病院はかって札幌養老院と呼ばれていて
大正14年に札幌で始めての老人ホームであった。この登山口は養老院口と呼ばれていた。
登山路に一歩入るとそこは原始林。200万都市札幌のざわめきが、 うそのように静まりかえり、鬱蒼とした林の中に木漏れ日が光っている。
入り口のすぐ右手に「天然記念物・藻岩原始林」と刻まれた石碑が建っている。 1921年にこの山の北東斜面が国の天然記念物に指定され、
植物の種類も樹木と草木で400種以上あるという。
原始林の中につけられた広い登山路沿いには、 観音様の石像と御詠歌が順次配列されている。 苔に覆われてほほえんでいる観音様や真新しい石像の 観音様の笑みに何番目と数えながらイタヤ、ハルニレ、ミズナラ、カツラ等のいくつもの巨木の中を歩く。登山口から約1・5キロほどの お地蔵さん九番目をすぎたあたりに「砲台跡」がある。 この台座は砲台として利用されることなく終戦を迎え、戦後、進駐軍が作った リフト台座として利用された。 砲台跡を過ぎ、秋のキリンソウやトリカブト等の咲く小路を登ると稜線にでる。 ここで旭が丘公園からの路と合流する。 樹木の間からチラッと見える札幌の街並み、 大都会の中にこんな大きな自然が残されていることに驚嘆する。 旭が丘公園からの路と合流してしすぐに北の沢からの路を併せ、 暫くは平坦な馬の背の歩みとなる。やがて前方に頂上部の盛り上がりを見ると一登りで頂上となる。 六角の建物が見えてくる。そこは藻岩山観音奥の院、 白い水かけ観音様に迎えられ、頂上に着く。三角点広場が新設され、 三等三角点はその真ん中に鎮座している。標高:530.91m。以前の三角点は山頂の超至近距離に二基あったが現在は撤去されている。 一基は藻岩山原始林館の屋上にあった。標高:536.59 m。もう一基は山頂北側の標高 530.82mにあった。 お地蔵さんの番号を確認しながら登ってきたが三十二番が最後で三十三番は麓に移されここでは出会うことができない。 藻岩山観音奥の院には「旧石堂にあった石像は水かけ観音として堂の傍らにある」との記述があり、 藻岩山観音奥の院に傍らに祀られている「水かけ観音」が三十三番ということなのであろうか? 三十三番の印もなく、なにかスッキリしない気持がする。因みに一番観音と三十三番観音は登山口から外れて、 麓の観音寺北側門の向かい側に並んで祀られている。 山頂にはレストランやプラネタリュームなども備えた展望台があり、1階 には登山者休憩室、トイレ、着替え室、靴洗い等も用意されている。 樽前山、恵庭岳、空沼岳、余市岳、手稲山、左手には札幌の街並みの向こうにピンネシリ,神居尻山,暑寒別岳等の展望を楽しむことができる。 発展する札幌の伸びやかな姿を一目で見ることが出来る「インカルシュペ」だ。 |
大きな「こくわ」の蔓 | 砲台跡 |
稜線に出ると旭が丘公園からの路と合流 | 旭が丘公園からの路と合流してすぐに北の沢からの路と合流 |
やがて前方の樹間超しに山頂が見えてくる | もうすぐ山頂 |
山頂に鎮座する藻岩観音奥之院 | 「三角点広場」に設置されている立派な三等三角点 |
三角点広場から札幌の街並みを展望 | 山頂の展望台 |
建物の屋上が展望台となっている | 展望台から「空沼岳」「札幌岳」方面 |
展望台の1階にある登山者休息所 | 登山者休息所の内部 |
観音寺北側に側に並んで祀られている一番・三十三番観音 | 一番観音と三十三番観音や守り地蔵 |
左から二番目が一番観音で両脇に守り地蔵、背後に一番の石柱、前列左から二番目が三十三観音 |