ピリカヌプリ・トヨニ岳 1630m.・1493m 2010/5/9〜11 天候: 曇・晴

ピリカヌプリは日高山脈の主稜線上で浦河町と大樹町の境に、トヨニ岳は 浦河町と広尾町の境にある山。ピリカヌプリはアイヌ語で美しい山を意味する二等三角点の山で、三角点名は「奴振=ヌプリ」、新田次郎の小説「点の記」や映画「剣岳・点の記」のモデル芝崎芳太朗氏が大正2年に埋標している。 また、トヨニ岳は豊似川の源流であることに依る山名であろう。 豊似はアイヌ語のトヨイ(トヲイが原型)で「食べる土ある、又は泥水ばかり出る川」 と言う説やトヨイ=トイオイ「土・ある・もの(処・川)」と言われている。
ピリカヌプリ(中央)  2010/5/10撮影 ピリカヌプリ(中央)  2010/4/30撮影
稜線の雪庇が崩壊している 南峰直下に設営 南峰より1475mピークを振り返る 06:07
南峰よりピリカ(中央) 北峰(右) 06:07 北峰の登りよりピリカ方面 06:35 北峰よりピリカ 06:53

2泊3日の計画で、野塚トンネル十勝口から登りはじめる。 ワカンを用意したが雪が適当に締まっておりツボ足で登れる。 トヨニ岳東峰へ直登する ルートも考えたが、 何回か渡渉したり、川辺の急斜面をトラーバスしたりしなければなならい。 すんなり登れる野塚トンネル十勝口から 直接尾根に取り付くことにする。本流の渡渉で靴を濡らしたくないので20分ほど上流に登りスノーブリッジを探して対岸に渡り、 野塚トンネル十勝口正面左側の尾根に取り付く。急登の尾根を1時間40分程で 稜線に出る。小雨模様で深くガスがたれ込め先は見えない中、十勝側に雪庇の発達した尾根を進む。1251m周辺は風の通り道となっていて強風時の通過は注意が必要だが今日は幸いに無風状態だ。1322mからは左が崖で右はトヨニ左股沢の急斜面で、風の強い時には強風のご機嫌を窺いながら渡る歩幅リッジ(通称)あたりには雪は無く、 岩混じりの細い尾根の踏跡を辿る。雪庇が不安定な所は踏跡(ハイマツの中に踏跡が出来ている)に逃げたりしながらアップダウンを繰り返し、3時間30分の稜線歩きでトヨニ岳南峰(本峰 1493m)に到着する。 今日はトヨニ岳まで5時間10分の行程であった。 南峰からは南の方向に野塚岳、オムシャ、十勝、楽古の山並みが白く輝いている。 今日はトヨニ岳南峰泊まりとする。頂上直下の雪庇の下に設営。 夜中には風も強くなり雨がテントを叩きつけていたが、翌日はからりと晴れた朝を迎えた。

早朝ブロッケン現象が現れたが、現象に浸ってしまい映像として残せなかったのが 残念である。6時06分にピリカに向けて出発、6時50分には北峰に着いた。 北峰から見るピリカは近く見え、短時間で行けそうな錯覚に陥る。ピリカの左側には神威岳 が大きくドッシリと構えている。右手にはクマの沢、左手には春別川が見える。1338mを越えたあたりの稜線が細くなった所は雪が着いているとナイフリッジ状なのであろう。 今は雪が消えハイマツが顔を見せている。雪が不安定な所はハイマツの踏跡に逃げ頂上直下の急斜面に着く。急斜面は雪が腐っているので階段状に登れて気楽であった。頂上に着く頃には雲が湧き期待した展望が無かったのは残念であった。

テントに戻ったのは16時だったので、もう一泊することにする。 下山途中の幌別岳(1512m)を越えたあたりで日高側から十勝側へ尾根を横切って山越えしている真新しいクマの足跡があった。 夜中になって強風の音に混じってミシミシと雪を踏みつけるような音が、昼間見た クマの足跡と重なって気持ちが悪い。翌朝は下るだけなのでテントの中でゆっくり支度をする。曇天の中登りのルートを辿り、登りに使用した尾根の一本トヨニ寄りを下ったが この尾根のほうが傾斜も緩く登りにも使用すると良かった。残雪期のピリカヌプリは 天候条件に恵まれると技術的に難しいところはないものの、奥深い山で、体力勝負の山であった。1251mコル付近の風の通り道やその先の歩幅リッジ、頂上手前1338mの先のナイフリッジでの強風時の通過はバランスを崩さないよう注意を要する。
北峰下りよりピリカ方面 07:29 幌別岳よりピリカ 08:00 幌別岳より振り返る 08:00
ピリカ直下より頂上を望む 頂上よりソエマツ方向 10:56 頂上より北東方向 10:56


一日目 出発 07:30 尾根取付 08:00 1135m稜線 09:40 トヨニ岳南峰着 12:50
二日目 テンバ 06:06発  北峰1529m 06:50 幌別岳 08:00 1338m 09:12〜09:30 ピリカ頂上10:56着 11:40発  テンバ帰着 16:00 
三日目 テンバ発 07:26 1251m  08:40  駐車場 10:00